研究関連TOPICS

2023.10.20

2023年ともいき学術フォーラム 第1回 実施報告

 ともいき研究推進センターでは本学教員相互の研究交流を図るべく、「ともいき学術フォーラム」としてそれぞれの専門領域から自由にお話をいただく企画を実施しています。3学科ともに昨年度秋学期から今年度にかけて、それぞれ3名の新任教員をお迎えしたことから、今年度の企画として毎回各学科より新任の先生を1名ずつお招きし、これまでの研究・教育活動についてお話をいただき、学生や教職員と共有する時間を設けたいと考えました。
 第1回目は8月9日(水)に総合社会学科より中嶌剛先生、臨床心理学科より不破早央里先生、こども教育学科より鵜飼洋子先生にご登壇いただき、同センター委員である中島千惠先生(こども教育学科)に司会とコーディネートをご担当いただきました。
 中嶌剛先生は「『とりあえず』で就職先を選ぶ若者たちの行方」と題して、公務員志望の若者たちとの対話がきっかけとなり始められた「とりあえず」というキーワードに着目したキャリア形成論の研究についてお話されました。進路における「とりあえず志向」として「性急さ」を求めるものと、それとは対照的に目指したい将来像へのステップを見据えた「持続性」を求める意識もあることが実証的に示され、「とりあえず志向」をただネガティブに捉えるのではなく、行動を伴う試行錯誤へつなげることが有意義なキャリア形成の鍵になるのではという問題提起をされました。
 不破早央里先生は「箱庭療法とこころ-イメージを用いた心理療法はなぜ治癒へ繋がり得るのか」と題した講演をしていただき、「心がなぜ病み、どのように治癒に至るか」という問題意識のもと、学生時代に心理学を志して箱庭療法に出会う経緯をお話いただきました。箱庭療法とはどのようなものかについての概説をふまえ、箱庭をつくることがなぜ治癒につながるかを実証的なアプローチで検証したいという目標のもと、「異質な自分との出会い」をキーワードにこれまで手がけられた研究や箱庭の事例を解説いただきました。そして最後に将棋と野球観戦もお好きであるという自己紹介もいただきました。
 鵜飼洋子先生からは「子どもが学びたくなる国語」として、学校教育における国語の位置づけや、教師にとっての教えにくさといった問題意識に基づいて考案された「読むこと」を扱う授業づくりの実践事例について紹介いただきました。「読んだことを基に自分の考えを持ち、表現する力」をつけるべく、登場人物の思いを想像させ、かつ自分の体験に引きつけて考えたことを色分けしたカードに記入・整理させて対話や発表を行うことや、説明文を読んで「すごい」と自分が思うところをカードに書いてクラスメートと交流しながらまとめていくなど、意欲を持って取り組みたくなる授業例が学年ごとに紹介されました。そして今後は本学で子どもの主体的な学習意欲を高められるような教師を育てていきたいという抱負を述べられました。
 3名の先生方によるご発表は、人と向き合い、人を育てていくという部分で重なり合うお話でありました。

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2023.03.23

2022年度ともいき学術フォーラム第3回 実施報告

 本学教員の研究交流を図り、学術リソースの紹介を行う「ともいき学術フォーラム」の2022年度第3回目をオンラインで実施いたしました。学内の教職員24名が参加し、「研究活動・よもやま話」と題して、今回は臨床心理学科の2名の先生方にご登壇をいただき、どのような経緯で研究の道に進まれたか、どのような関心に基づいて研究テーマを見出していったかということを主軸にお話をしていただきました。

 千秋佳世先生(臨床心理学科・講師)はご自身の子ども時代に研究の原点がありました。ある日ふとしたときに、幼い千秋先生は自分が自分でないような、別のところから自分を見ているような状態になり、いつかは消えてしまうような感覚にとらわれます。「確かさを失ったとしても生きているらしい『わたし』というのは何だろうか? みんなもこのような感覚を抱えているのだろうか」と誰にも言えずに思い続け、やがて大学の授業で思春期・青年期の心理学における「自我体験」という概念に出会うことで、長年の思いが研究テーマとなりそうだと考えます。

 それまでの未分化な世界を脱して「私について問うことのできる私」が認識されていく、そうした自我体験との関わりを臨床心理学的に探求しはじめますが、しかしいざ取り組むとなると、先行研究の少なさや、体験の定義づけの難しさに直面します。試行錯誤の末、調査協力者には千秋先生がまず自分の体験を語り、そこから連想したことを自由に語ってもらうという方法で、体験者それぞれの物語を集めていきました。共有しにくい感覚を、千秋先生が「他者」として語りを聞いていくなかで、「懐かしさ」や、「失わざるを得ない一体感」といった要素が自我体験を特徴づけていくものと捉えて研究を続けておられるとのことです。

 つづいて山﨑基嗣先生(臨床心理学科・助教)も、ご自身の生い立ちから現在の研究に至るまでのお話をしていただきました。子どもの時からピアノに親しんでいたという山﨑先生は大学では教育学部に所属し、臨床心理学は「横目で見ていた」とのこと。そうして教育実習を体験するなかで、クラスのなかでどうしても気になってしまう児童生徒が出てくることから、個々の子どもに向き合って対応することに強い関心が芽生え、臨床心理学の道へ進むことになります。

 卒論では得意の音楽を活かして、演奏体験の感覚について取り上げます。調査協力者に演奏体験をしてもらい、言葉を介さない音楽を通して「合う感じ」を心理臨床的観点から探っていくものでした。

 そして大学院生になってからは、より深く臨床心理学を学ぶ日々となり、それと同時に糖尿病研究会にも属し、慢性疾患の方々へのサポートなどを行います。臨床経験を積むなかで、元来より「音」に興味関心を抱いていた山﨑先生は、研究テーマとして臨床現場での「声」に着目するようになります。面接における声は、普段の声と同じなのか違うのか。よりよい心理カウンセリングのありかたを考えるうえで、音声データからアプローチしていく研究を手がけていったそうです。

 ご自身の体験から出発し、思索を重ねていって、どのように研究として設定していくか。お二人の先生のお話にはそれらが共にうかがえる内容でした。

2022.10.31

2022年度ともいき学術フォーラム第2回 実施報告

 ともいき研究推進センターでは本学教員相互の研究交流を図るべく、「ともいき学術フォーラム」としてそれぞれの専門領域から自由にお話をいただく企画を実施しています。今年度第2回目は10月12日に、総合社会学部の瀧澤正己先生のコーディネートにより「若手教員が語る 研究テーマとの出会い」と題して同学部より吹上裕樹先生と中西勝彦先生をお招きし、カラヴァシレヴ・ヤニ先生の司会進行で行いました。
 吹上先生は「音楽の社会学から舞台愛好の社会学へ」と題して、クラシック音楽に親しんでいたことから社会学において音楽をテーマとした研究に取り組み、その難しさや面白さを紹介いただきました。そして、近年強く関心を抱いている「文楽」について、フランスの社会学者エニョンの理論を手がかりにご自身の参与体験を事例として、愛好家が生まれて趣味世界に入り込み、やがて媒介者となって趣味の世界を豊かにしていくプロセスや研究手法の可能性について解説いただきました。
 続いて中西先生からは「単位不足学生から見つめるキャリア教育と大学教育」と題して、大学に入学するも授業に興味が持てず単位が取れないままに過ごしていたご自身の学生時代のお話を披露していただきました。そんななか当時新設されたキャリア形成支援の科目を受講したことがきっかけとなりファシリテーションやワークショップによる教育手法に強い関心を持つようになり、やがて学生サポートスタッフとして授業運営に携わり、多くの学生に伴走してきたことが現在の教育研究活動につながっていったという経緯を語っていただきました。

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2022.08.30

2022年度ともいき学術フォーラム第1回 実施報告

 ともいき研究推進センターでは本学教員相互の研究交流を図るべく、「ともいき学術フォーラム」としてそれぞれの専門領域から自由にお話をいただく企画を実施しています。今年度第1回目は6月29日に、こども教育学部の中島千惠先生のコーディネートにより「『育む』:2つのアプローチ」と題して、同学部より藪一裕先生と堀内詩子先生をお招きしました。

 藪先生は「施設や里親の下で暮らす子どもを育む」と題し、ご自身が長年勤務されてきた児童養護施設で出会ってきた子ども達との関わりについてお話いただき、児童福祉において「社会的養護」から「社会的養育」へ転換している流れのなかで、里親制度や施設の拡充、人材養成など、子どもが回復・自立する環境づくりのために検討すべき様々な課題があることを説明いただきました。

 堀内詩子先生からは「音でつながる子どもの世界」と題して、音楽教師として子どもたちと向き合い、その後臨床心理学へ進まれたご自身の経緯を紹介いただきました。そして来場者と「音の感覚」を共有する簡単なワークを実施いただき、音という見えないものを表現して伝え、他者と共感していくということを、教育的・心理支援的な関わりに結びつけて捉えるというご自身の問題意識について論じていただきました。

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2021.10.04

2021年度「ともいき学術フォーラム」第1回

 ともいき研究推進センターでは、さる6月30日(水)第3限に、本年度第1回目の「ともいき学術フォーラム」をオンラインで実施いたしました。

 今回は、現在学会長をお務めの先生方に、所属学会のご様子をざっくばらんにお話しいただくとともに、様々なご苦労、そして今後の展望などについて伺いました。ご報告がたいへん遅れてしまいましたが、以下、ご報告申し上げます。

クリップボード一時ファイル01.jpg まず、総合社会学科の馬場雄司先生より、現在学会長をお務めの「日本タイ学会」についてのお話を頂戴しました。前身団体「タイセミナー」が1990-1998にかけて温泉合宿形式での研究会を続けていく中で学会設立の機運が高まり、遂に1999年に学術分野を横断的に繋ぐ学術交流の場として「日本タイ学会」は設立されました。かつての合宿形式は行われなくなったものの異なるディシプリンに基づく広範な研究の場として現在もあり続けています。また、同学会は東南アジア学会や国際タイ学会の支部ではありませんが、関わりを持ち続けています。例えば、コロナ禍がなければ2020年に京都で実施されるはずであった国際タイ学会大会は2022年4月に京都で実施される予定ですが、これに対してもお手伝いをされているとのことでした。

 国内の学会(大会)では「自由論題」と「共通論題」を設定し活発な議論が行われています。時として話題になるのが、そもそも「Thai(国)」について、あるいは「Tai(族)」について扱う学会なのかということですが、雲南省、ミャンマー、ラオス、タイにタイ族は居住していますので、国の枠を超えたところで種々の研究報告が行われています。現在、学会では若手日本人研究者育成やタイ人留学生の支援等についても力を入れているとのことでした。また、本学の国際交流委員長を兼任されていることから、今後の本学の国際交流や留学生受け入れについても種々想いを巡らせているとのことでした。最後に、ご自身も演奏者として関わっておられる「タイ音楽・舞踊ワークショップ」についてもご紹介がありました。

 続いて、同じく総合社会学科の鵜飼正樹先生より、現在学会長をお務めの「見世物学会」についてのお話を伺いました。

 お話は設立に向けた準備会での出来事から始まりました。錚々たる発起人メンバーの中で紹介を受け参加された鵜飼先生は、会場まで同行された方が意見の相違に立腹して席を立ったにもかかわらず、当時の「見世物学会」設立に向けたこの唯一の機会を何とか活かしたいとの思いで、その場に残り学会設立までの過程をつぶさに目にされたそうです。その後、この学会は「学会自体が見世物化する」ことも狙い、新宿のとある神社の境内にテントを張って設立大会を開催したとのことでした。学会の参加者は、研究者、芸術家、見世物業界の方と多岐に渡り、事務局は飴細工の職人さんが務められました。

 一方で、見世物業界は設立当時でも5団体程度で、現在残っている見世物小屋も全国で「ひとつ」のみとのことでした。いわば「なくなること」が約束されているような業界でしたが、見世物学会では、会報を年一回発行し、学会誌は一般の方も購入できるようなかたちで着実に公刊してきました。また、学会(総会)会場も、大阪の飛田遊郭や名古屋の大須演芸場などの場所で実施することで、学会開催自体が一つのイベント/パフォーマンスでもあるようなスタイルを選んできたそうです。

 初期の著名なメンバーが逝去されたり退会されたりする中、鵜飼先生も少し学会活動から離れていた時期もあったそうですが、2010年代の前半から活動に復活されたそうです。学会長として今取り組んでおられることは、数年後には消滅しているであろう見世物の「歴史の継承」を第一に考え、文字に残されていない「呼び込み」を例に挙げ、これらを記録に残していくことに注力しているそうです。同時に、絵看板、仕掛け、小屋の作り方、等を記録し保存することも行っているとのことでした。

クリップボード一時ファイル010.jpg 失くなっていくものを記録するだけでは寂しいので、新しいかたちの見世物を創造できないかという思いの下、みんぱくでの「見世物大博覧会」の開催にも関与し監修されたとのこと。また、個人的にも解散した「安田興業社」から譲り受けられた数々の品々を保管されているとのことでした。

 「新しい見世物を、テクノロジーの助けも借りた小屋の中でどのように見せることができるのか」について考えていきたいと、最後に今後の見世物の可能性についても触れられた後、お話は終了いたしました。

2021.04.13

ともいき研究推進センター・こども教育学部共催「ともいき学術フォーラム#3」を開催しました。

 

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1月20日(水)に実施された2020年度3回目のともいき学術フォーラムは、年度末でご退職される寺田博幸先生(こども教育学部・教授)の最終講義「地域,宇治市,大学が紡ぐ子どもの未来」―子どもの自己肯定感を育む子育て支援プロジェクト&つながりひろば」として開催しました。

  第1部では、先生が取り組んでおられる子育て支援プロジェクトに参加経験のある2~4回生(小学校教員養成コース)も登壇して、活動の様子を写真で振り返りながら活動で得た学びや感想を順々に発表しました。

  第2部では、先生ご自身が経験された友人や教え子たちとのエピソードから、相手を深く理解して本音を受けとめられるような信頼を築くことがいかに大切か熱く語られました。「人が生きるということは、支えられ助けられるということ。人が生きるということは、支え助けるということ。」目の前の人々に真摯に向き合ってこられた先生だからこそ一つひとつの言葉が力強く、心に響きました。指導を受けた学生が教育者になっても、先生の思いは受け継がれていくことと確信しています。

2021.04.13

ともいき研究推進センター主催「ともいき学術フォーラム#2」を開催しました。

12月16日(水)に実施された「ともいき学術フォーラム#2」では、2020年度4月に着任された3名の先生にご登場いただき、自己紹介も兼ねてご自身の研究について語っていただきました。

井上嘉孝先生(臨床心理学部 准教授)は、心理学的課題を深層心理学的な観点から検討し、怪物イメージに投映された精神史・現代意識論等を研究され、患者の夢の中に出現した吸血鬼は、深層心理にある問題の起点や心の動きの原点となったことを論じられました。

中橋 葵先生(こども教育学部 講師)は、幼小接続期の数量・図形の認識発達と算数教育の適切な援助や指導について研究され、見た瞬間に数量がわかる「サビタイジング」ができるのは、幼児期での体験が影響し、就学後の算数の理解にも影響することを詳しく解説されました。

カラヴァシレヴ・ヤニ先生(総合社会学部 講師)は、高度人材採用と直接投資を中心に、日本企業の海外活動とメディア報道に関する実証研究を行われており、海外でのジョブフェアにおいて、どの企業ブースが求職者へのイメージ効果が高くなり、その企業で働く意欲が高くなるのか国際的なデータで検証されました。

オンラインでの開催でしたが、20分お話いただいた後、10分程度のディスカッションを挟み、異なる研究領域の研究者の発表を通じた交流により、新たな刺激を受け本学の研究活動の活性化に向けた良き機会となりました。

2021.02.15

橋本祥夫准教授の科研費による研究が世界的な学術ジャーナル"The Impact"に掲載されました。

こども教育学部、橋本祥夫准教授の科学研究費助成事業【基盤研究(C)】による研究プロジェクト「総合的な学習の副読本作成による地域協働型教材開発と評価・改善に関する実証的研究」の研究内容が、英国のScience Impact社が出版するImpactに掲載されました。本研究課題の目標は、宇治市教育委員会との共同研究により、宇治市内の全小中学校で使用する総合的な学習「宇治学」の副読本を作成し、授業実践の評価・改善を図ることにあります。授業を通しての学習効果を、学校、児童生徒を対象にした質問紙により質的・量的に測定、分析しました。

本研究により、地域社会の一員としての自覚を持ち、主体的、協働的、実践的態度を養うことが可能な「地域協働型学習モデル」を提示しました。こうした教育は、日本のみならず、グローバルな視点から世界各国で必要とされる教育です。これらの成果が注目されることとなり、Impactにその研究概要が掲載されました。

Science Impact社が出版するImpactは印刷版とデジタル版があり、世界のおよそ3万5000人の読者に向け配布され、世界の大学、研究機関、国および地域の資金提供機関、政府、民間および公共部門の主要な研究資金配分元において読まれます。当出版物は、世界最大規模のオンライン学術情報DBであるIngenta Connect(インジェンタ・コネクト:月150万アクセスがあり、3万の学術研究・産業図書館にて利用されています。)上でオープンアクセスのかたちで提供されています。

2020.09.30

「ともいき学術フォーラム#1」を開催しました。

令和2年度第1回目のともいき学術フォーラムを9月30日(水)に開催しました。講師として今年度本学に着任された筒井義郎先生(総合社会学部・教授)をお迎えし、「COVID-19 と経済学」というテーマでご講演いただきました。先生は行動経済学、金融を主な研究分野とされており、昨年度からは日本とイスラエルとの共同研究を「メガリスクに立ち向かうには」というテーマで取り掛かろうとされていました。しかし丁度その時期に新型コロナウイルス感染が世界中に広がったため研究対象をコロナ感染に関する事象と設定し、大規模アンケート調査を軸として現在精力的に活動されています。

行動経済学とは人間は必ずしも合理的な行動をするわけでないという考えに則って発展した学問なのですが、身近な例を挙げて様々な視点からの分析を紹介される様子に参加者は興味深く聞き入っていました。終了後「日頃触れる機会の少ない分野のお話を聞き、研究の視点や研究手法の点等から改めて自分の研究を考える時間となり、刺激を受けました」などの声が寄せられ、今後の研究活性化を予感させる機会となりました。