● 【実施報告】2026年1月5日開催「<ポスト真実>時代の物語―私たちは何を楽しむのか」
2026年1月5日、臨床物語学研究センター主催の公開講演会「<ポスト真実>時代の物語―私たちは何を楽しむのか」が開催されました。
客観的な事実よりも個人の感情や信念が影響力を持つ「ポスト真実」という状況が、私たちの「楽しみ」の文化にどのような変化をもたらしているのかについて、桃山学院大学の木島由晶先生を講師に迎え、ディスカッションが行われました。
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司会を務めた山崎晶先生は、かつてのマスメディアが想定していた大きな「大衆」の塊が解体され、現代は個人の実感や主観を重視する多様な楽しみへとシフトしている現状を指摘しました。その具体的な事例として、山崎ゼミ4年次生の髙橋桃さんから「VTuber」と「イマーシブシアター」という2 つの文化事象が紹介されました。VTuberは、人間とキャラクターの境界に位置しながら視聴者との双方向のやり取りを通じてその在り方を変化させていく点に特徴があります。また、没入型演劇であるイマーシブシアターは、観客が物語の中に直接介入し、自身の選択によって展開が変わるため、参加者一人ひとりが異なる「自分だけの物語」を体験することができます。
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これらの新しい流れに対し、木島先生は1980 年代からの「キャラクター文化の台頭」と「物語の複数化」という歴史的な流れから解説を加えました。かつてのロールプレイングゲームやゲームブックがそうであったように、作者が決めた唯一の正解を受け取るのではなく、受け手側が自ら選択し、主人公として介入するスタイルが現代のエンターテインメントの基盤となっており、さらに現代では、そこに身体的な没入感やリアルタイムの交流が加わり、より多層的な物語体験へと進化していることがいくつかの事例をもとに示されました。
「ポスト真実」時代の物語とは、単一の事実を超えて、個々のオーディエンスが主体的に関わり、自分なりの「真実」や「実感」を見出していくプロセスそのものだという議論が展開され、私たちが日々享受しているエンターテインメントの裏側にある社会的な変容を深く見つめ直す、示唆に富んだ機会となりました(事務局 立石尚史)。

