アーカイブ

【実施報告】2023年1月16日開催「コロナを鎮める物語~妖怪文化を手がかりに~」

 1月16日(月)に本学臨床物語研究センター主催のシンポジウム「コロナを鎮める物語:妖怪文化を手がかりに」を開催しました。コロナ禍で社会が混乱した2020年春に、なぜ妖怪アマビエは突如「発見」されたのか、またなぜ架空の存在によって私たちは不安な心を収めようとしたのか。本シンポジウムでは、妖怪の創作のほか、妖怪を用いた地域振興活動や、妖怪文化研究で活動されている嵯峨美術大学の河野隼也先生をお迎えし、現代社会における妖怪とファンのあり方や、コロナ禍の影響についてお話をうかがいました。

 自作のアマビエの頭(大人が被れるサイズ)と一緒に登壇された河野先生は、アマビエは日本の妖怪でも屈指の「ゆるい」見た目を持ち、そもそもアマビエという名前も描き手の下手な字がそう読めるからといわれていると、原画の画像をもとに話してくださいました。コロナ渦に妖怪ファンの造形作家たちが仲間内で楽しんでいたアマビエが、ネット経由でしだいに広まっていったようです。

 先生のお話から明らかになったのは、妖怪は私たちが理屈で説明しにくい現象に姿を与えたものだということです。アマビエはコロナのような困った病を退治してくれる架空の存在として、社会になじんだように見えます。それは「アマビエが病をやっつける」という物語の力で、私たちが厳しい現実を乗り切ろうとしたとみなしうるでしょう。臨床物語学研究センターでは、引き続き心の支えとしての物語について考えていきます。(報告者:山崎 晶)230116写真.jpg