7月6日(水)に本学臨床物語学研究センター主催、本学グリーフケアトポス「Co*はこ」協力のもと、「境界性の図像―九相図に表現される、あわい」と題した公開シンポジウムを実施しました。
仏教絵画において死者の体が時とともに朽ちていく様子を描いた「九相図(くそうず)」をめぐり、この分野で第一人者とされる早稲田大学の山本聡美先生をお招きしました。
まず最初に平岡聡先生からは九相図につながる前景として、古代仏教における修行の場として死者の存在に近い場が選ばれていたことの象徴的な意味について解説がありました。
続いて山本先生に基調講演をしていただき、僧侶が肉体への執着を滅却させる「九相観」の修行のために九相図が用いられ、やがて時代とともに絵巻や詩歌に取り入れられながらその解釈が変容し、現代美術のアーティストによってもモチーフとされるに至る展開が紹介され、時空を越えた死生観を表現するものとしての九相図を解説いただきました。
それを受けて倉西宏先生より、臨床心理学の見地から九相図を捉えるにあたり、「死を見つづけること」と、神話・昔話にみられる「見るなの禁」のあいだにある境界性をいかに考えるかが、「死生観」のありかたを考えるうえで興味深い点となりうることなどが論じられました。(報告者:倉西宏)