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【実施報告】2022/6/8開催「セラピストのコミュニケーション能力を養うためのワークショップⅧ」

 本学客員教授で劇作家、演出家、芸術文化観光専門職大学学長の平田オリザ先生による『セラピストのコミュニケーション能力を養うためのワークショップⅧ』を、臨床物語学研究センターの主催で開催しました。会場参加に加えて、ハイフレックス型としてYouTubeライブ配信も行い、100名程の方々にご参加いただきました。

_DSC0093.jpg 毎年シリーズで開催している本ワークショップですが、近年はコロナ状況もあり、一部形式を変更しての開催となっていました。しかし、本年度はコロナ状況を考慮しながらも身体を使ったワークも取り入れていただき、参加者にとってはより体験的な学びの時間となりました。

 平田先生は、演劇的手法を取り入れたワークショップを様々な教育現場で実践されており、今回はその一部を登壇したセラピストを目指す大学院生に対して理論的、構成的背景の解説を交えながら行ってくださいました。導入として声を出して行う仲間探しゲームから始まり、相手に体重を預け身体で信頼関係を作るゲーム、ランダムに与えられた役柄を演じながらペアを作るゲームと、徐々に演劇的、心理的に近くなっていくワークを体験した参加者は、自然と打ち解け合い笑いが生じていました。

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 次に、キャッチボール・大縄跳びをマイムで演じるという、より演劇的なワークへと舞台は進みます。身体的・精神的な経験の有無により相手への伝わりやすさが変わることを体験した参加者は、「イメージの共有」という演劇を構成する重要な要素に気付きます。「イメージの共有」は、演劇の世界だけではなく日常のコミュニケ―ションにおいても重要であり、「中身が良ければすべて伝わる」と思い込んで伝え方の工夫を怠ると相手には伝わらないと平田先生は指摘します。言葉から受けるイメージは個人によって様々であり、相手とイメージを共有する為に様々なやりとりをしていくことの大切さを参加者は学びました。

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 最後は、列車に乗り合わせた乗客同士の寸劇を通したレクチャーで幕を閉じました。それぞれが生きてきたなかで生まれた個性と、話される言葉から受けるイメージを読み取り、どんなつもりで言葉が発せられたのか「文脈<Context>」を汲み取ることがコミュニケーション能力において重要だと平田先生は述べられます。文化や習慣、体験が異なる、素直に自分の気持ちを伝えられない、そんな人達の言葉の背景に想像を膨らませ寄り添うことが、人間にできてAIに出来ない領域だというお言葉に、対人援助職を目指す大学院生たちは真剣に聞き入っていました。

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 異なる価値観を持つ他者と、どのようにコミュニケーションを重ねていくかという、大切なテーマを、平田オリザ先生が持つ国際的な広い視野と、演劇的に緻密に構成されたワークショップを通して学ぶことができました。(学生スタッフ:花本和真)