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【実施報告】2021/11/24開催「文楽と日本人の心」

 本学客員教授である桐竹勘十郎先生をお迎えし、臨床物語学研究センター主催『文楽と日本人の心』にてご講演と文楽の実演をいただきました。本年度は会場を本学同唱館に移しての開催となり、当日の様子はYouTubeにてライブ配信をおこないました。当日は計150名が参加し、YouTubeでのオンデマンド視聴は600名を超える方にご視聴いただきました。

 桐竹勘十郎先生の重要無形文化財保持者(人間国宝)認定を祝し、本学学長である平岡聡学長より花束が贈呈されました。平岡学長は、「人間国宝とは目に見えない人間の"技"が国の宝として認められたということ」と述べられ、即物的な思考のなかで、「目に見えないものの存在が人間に大きな影響を与えることを再認識した」と来場者に伝えられました。54年間人形遣いの道を歩まれてきた桐竹勘十郎先生は、人間国宝に認定されたことで、芸が認められた喜びと共に、芸を守り伝えていく責任がいっそう重くなり気を引き締めていく思いであると語られていました。DSC_0009.JPG

 「日本人は、特に人形と慣れ親しんできた民族であると思う」と古来から続く日本人と人形との繋がりを述べられました。神様と通じ合う為に形代・ヒトガタと呼ばれる人形を用いたり、神の依代として人形を祭る祇園祭の風習。こけしや雛人形等の穢れを払うための置人形や子供の人形遊びといった身近な人形との関わりなど、日本の文化を解説されました。DSC_0020.JPG        

 古来から受け継がれてきた人形遣いの技を、解説を交えながら実演いただきました。人の繊細な動きや感情を人形に宿す為に考案されてきた細工の微細な動き一つ一つに会場中が見入っていました。文楽の特徴でもある"三人遣い"の解説では、首と右手を担当する主遣い(おもづかい)、左手を担当する左遣い、両足を担当する足遣いの3名の技や、言葉を発せないなかでどのように呼吸を合わせて一つの人形を動かし、命を宿らせているのかを教えて頂きました。DSC_0056.JPG

 文楽の実演では、女性の繊細で美しい動きを表現する女方の中から「艶姿女舞衣」の一部をご披露いただきました。三人遣いの技により魂が宿ったお園人形に会場中が魅せられていました。DSC_0366.JPG

 平尾和之センター長との対談では、演じる人形の役柄を表現する難しさが語られました。自身の動きだけでは人形の役を表現しきれず、役に入り込みすぎても周りが見えなくなると述べられていました。また、三人遣いの難しさとして3名が一つの役に対して思いと息を合わせることを挙げられ、足遣い、左遣い、主遣いとそれぞれ十数年の修行を経たからこそ表現できるものがあると語られました。DSC_0398.JPG

 300年以上の歴史を持つ人形浄瑠璃、その歴史の中で文楽と言う言葉が世に出て150年となる2022年に、桐竹勘十郎先生は現代美術家の森村泰昌氏と人間浄瑠璃という新な文楽の表現に挑戦されると発表されました。歴史を守り、伝え、発展させていく桐竹勘十郎先生の姿勢に来場した学生は心を打たれていました。最後に、コロナ状況に翻弄されている学生に対して「明るい希望や未来をイメージすることが力になる」とお伝えいただきました。(学生スタッフ:花本和真)