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【実施報告】2019/12/18『<われ>の物語』

歌人で能楽研究者の小川佳世子先生をお招きし、臨床物語学研究センター主催の講演会が行われた。

講演タイトルは『「〈われ〉の物語」―われは割れていたのか―』。小川先生は多くの病を得ておられ「今年は10年ぶりで入院しなかった」とのこと。壮絶な人生を歩んでおられる小川先生は、絞り出すような声で、短歌と能楽の話を中心に論を進められた。中でも印象的だったのは、アマテラスが天岩戸から出てくる際、鏡に映った自分を見るのだが、その鏡がひび割れたものであったという説がある、とのくだりであった。IMG_2818.JPG

後半の秋田との対談部分も合わせて述べれば、他の神々にはこの上なく高貴に見えるアマテラスだが、自身はひび割れた鏡に映ったdisfiguredの姿を見た。この落差が興味深い。秋田のDisfigured Hero元型論と重なるとともに、醜形恐怖の日本的原点である物語だとも考えられる。IMG_2831.JPG

 小川先生は病魔と闘い続けておられる。しかし、そこから短歌がほとばしり出る。第一歌集、第二歌集とも受賞されている。もし健康であられたら、生まれなかったであろう短歌の数々。そのあたりのことをお伺いすると、「やはり健康でいたかった。でも、これでよかったのかな、とも思う」とおっしゃられた。すごいものが創造されるには、「傷」が必要であることが多いのだろうかと、改めて思わされた。

  当日の動画はこちらから ⇒  京都文教 大学生用 【1】【2】  京都文教 短大生用 【1】【2】  京都文教 教職員用 【1】【2】