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【実施報告】2019/2/27 『歌舞伎と日本人の心』

臨床物語学研究センター「歌舞伎と日本人の心」

講師:中村獅童(歌舞伎俳優・本学客員教授)

2019年2月27日(水)13:00-14:30 G101教室

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 臨床物語学研究センターによる主催で、本学客員教授を務めておられる歌舞伎俳優の中村獅童氏を2年ぶりに本学へお招きし、約200名の聴講者を前にご講演いただき、また同センター長の秋田巌先生と対談していただきました。


 中村獅童氏はNHK大河ドラマ『いだてん』にもご出演中で、そして歌舞伎でも最新テクノロジーを利用して実現した、バーチャル歌手の「初音ミク」との共演による『超歌舞伎・積思花顔競』も話題になるなど、伝統を守りつつ革新的な取り組みにも挑戦し、幅広いご活躍を見せておられます。「デジタルの時代においてこそ、アナログでしか味わえない感動があると思う」と述べられ、特に「義理人情」や「粋(いき)」、そして「わび・さび」の感覚はデジタルでは表現できないのではないかという問題意識のもとで、最先端のものを遡上に乗せつつ、日本人の心性というアナログな部分をどう捉えるかといった課題などについてお話をしていただきました。



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 対談では、なぜ中村獅童は長く活躍し続けられるのか、その「強さ」の理由について秋田所長が問うと、「自分はむしろ弱い人間です」と答えられ、「今でもあがり症で、かつては役者を辞めたらどうだと言われたこともあった。しかし諦めるのは簡単なので、なんとか役者として生き続けようとした。幸いにも若い時期に、精神的に強い人間の役柄を多くいただけたことで、自分を投影しながら身心ともに学ぶことができ、そこでより成長できた」と述べられました。聴講した学生からは「スランプになるときはありますか」と質問が挙がり、「いつでもスランプ。舞台の上はやり直しがきかないですし、そこで満足したら明日はないと思っています」とお答えいただき、「傷つくからこそ人に優しくなれるだろうし、若い学生さんにはどうか夢を見続けて、そこに向かって行動を続けてほしい」と激励のお言葉をいただきました。