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【実施報告】 2017/12/16 公開シンポジウム『ロボットは宗教を持つのか?』

京都文教大学臨床物語学研究センター主催の公開シンポジウム『ロボットは宗教を持つのか?』が12月16日に本学弘誓館G101教室で実施され、約400名の来場者にお越し頂きました。ロボット・AI工学の第一人者である大阪大学教授の石黒浩先生、本学客員教授であり劇作家・演出家の平田オリザ先生、そして宗教学者の山折哲雄先生をお迎えし、本学の秋田巌センター長、博士後期課程の河嶋珠実さんの司会と趣旨説明により進められました。

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 まず石黒先生からは、ご自身が展開されるロボット・AI工学の最前線や未来社会への展望をご報告いただきました。進化するアンドロイドの姿を通して我々は「人間としての存在」を考えさせられ、また人間とともに生きる感情的な存在として発達していく未来像が描かれる一方、人間の側も100年後、1000年後を生きのびるために、「有機的なものから無機的な生命体へと進化していく可能性」が考えられることを示唆されました。

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 石黒先生とともに共同研究を行い、史上初のロボット演劇を手がけられた平田先生からは、工学研究者が機械の動作をスムーズかつ正確に処理しようとする志向に対して、演劇・芝居の観点から、「ムダ」のある動作を入れることで、より人間になじみやすいアンドロイドに近づけた事例などから、文理融合の学際的研究成果の好例としてロボット研究の進展を解説いただきました。そして感情的交流が芽生えるロボットの存在が身近なものになりつつある近未来において、ロボットと人間の違いなどを真剣に議論した法整備の必要性を説かれました。

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 これらの報告を受けて山折先生からは、人間の喜怒哀楽、正邪善悪をも数字化されてロボットづくりに反映されていく現況に驚きを表明されつつ、近代的自我の葛藤に直面した夏目漱石を例に「心」と「こころ」をめぐる感覚に日本人の宗教観があることを説明され、人の煩悩や欲望といったものも今後はロボットが表現できるのかどうか、そして人類が近代化に伴って「神殺し」をしてきたとされる歴史観をふまえ、逆に今後はロボットの進化によって「神探し」に舵を取る可能性があるといった問題意識を述べられました。

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 最後にパネリストによるディスカッションが行われ、人間の気持ちを汲み取るようになるロボットにとっての倫理性や道徳性は、法律だけでは制御できない可能性が高く、そこに超越的な寿命を持つようになるロボットにとっての「死生観」といったものが関わってくるとき、ロボットにとっての「宗教」のあり方が問われてくるのではないかといった刺激的な議論が展開されました。

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