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【実施報告】2016/11/16『神道と日本的精神性』

 宗教学者の山折哲雄先生をお招きし、「神道と日本的精神性」をテーマにご講演をいただきました。「神道をやわらかく説明するのは難しいです」と冒頭に述べられつつ、山折先生は日本神話における八百万の神を単に「多神教」と捉えるのではなく、そこに新たな視点を加え、肉体や個性を持ったギリシア・ローマ神話のような「目に見える多神教」と、古事記や日本書紀にみられる「目に見えない多神教」があるとすれば、古くからの日本人がこうした神をどう捉えたかについて、次のような仮説を述べられました。

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 まずは「記号として捉える」ということで、伊勢神宮の「内宮・外宮」、伏見稲荷大社の「上社・中社・下社」など、本来は長い名前を持っている神々を、こうした記号で呼び表す心性は日本独特のものがあるとのことです。次に、「その場所との結びつきで捉える」ということで、地鎮祭が今でも執り行われるように、その地に静まっている神の存在を大事にしてきたことがうかがえます。そして「目に見えない神」であるがゆえに「神を分割し、一瞬で無限を行き来できるものとして捉える」ということも、日本人特有の「祟り信仰」にみられるような影響と強い関連があるのではないかということです。

 また、伊勢神宮の式年遷宮において社殿を移し替えることを例に「古い神が死に、新しい神が生まれる」という捉え方があることも日本人における特徴として考えられ、明治以降の歴史教育における神話の位置づけや、現代における天皇陛下の生前退位の議論にみられる日本人の精神性についても論じられ、現代の私たちと古来からの神話のあり方を問い直す刺激的なお話をいただきました。

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