● 【実施報告】 2016/10/19 『武士道と日本的精神性』
2016年10月19日(水)、日本文化研究センター名誉教授である笠谷和比古先生をお招きし、『武士道と日本的精神性』というテーマで講演会を開催いたしました。
まずは、現代日本で起こった電車事故や震災を例に取り、その際に日本人がとっさにとる行動が武士道の精神に通じていること、
また、私たちがあたりまえとしている行動や思想が、海外の人々にとってはとても珍しいことである、ということなどをお話しいただきました。
さらに戦国・江戸時代に形成された武士道精神とはどのようなものなのかを、
徳川時代に武士の教科書として読まれた『甲陽軍鑑』や一般庶民にも広く読まれていた教訓書『可笑記』などを取り上げながら教えていただきました。
武士道のなかで特に大切にされていることは、①嘘をつかないこと、②約束を守ること、だそうです。
武士道七則の「忠」「義」「勇」「誠」「証」「礼」「普」についても詳しくお話しいただきました。
七則のなかで仏教や儒教の精神と大きく違うのは「証」(証拠主義)であり、武士道の中では事実に基づいて物事の判断、人物判断をしていく、
証拠の裏付けを持った判断のみが依拠できる判断であるとされていました。
このような武士道の精神は、民族として日本人のDNAに伝わるものではなく、江戸時代に社会に深く浸透し、"社会のDNA"として存在している、
つまり、日本社会に長く暮らしている人や武士道の行動様式や価値観に強いシンパシーを覚える人など、民族的な壁を越えて共有できる感覚である、と話されていました。