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【実施報告】 2016/7/18 「認知症とともに生きる:『認知症の人にやさしいまち・うじ』の実現に向けて」

718日(月)に、大学COC事業・ともいき研究助成「宇治市認知症アクションアライアンスに関する当事者研究」主催、ともいき講座「認知症とともに生きる:『認知症の人にやさしいまち・うじ』の実現に向けて」が実施されました。今回は臨床物語学研究センターも協力させていただきました。

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 2025年には高齢者の5人に1人が認知症を患う時代がくるとされているなか、宇治市では2015年に全国の自治体では初めて「認知症の人にやさしいまち」の実現を目指すことを宣言しました。

 今年からは「宇治市認知症アクションアライアンス"れもねいど"」が発足し、認知症当事者の参画を中心とした、医療・行政・教育・その他さまざまな領域との協働事業を展開していくことになりました。

 本学の学生とともに認知症をめぐる取り組みを行っているセンター所員の平尾和之先生(臨床心理学科)が司会・コーディネーターを務め、認知症当事者である杉野文篤さん・由美子さんご夫妻と京都府立洛南病院の森俊夫先生をお迎えし、「認知症の疾病観を変えていきたい」という趣旨で本イベントは企画されました。

 

 長年認知症の方々と伴走されてきた森先生の解説をふまえつつ、文篤さんはご自身が認知症と診断されるに至った経緯や、由美子さんとともに過ごした不安や困惑の日々をお話されました。

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 やがて杉野さんは若年性認知症プログラムの一環でテニス教室や「認知症カフェ」に参加し、そこでさまざまな仲間との出会いによって、「希望と明るい笑顔」を取り戻します。そこでは、「援助される人/援助する人」という区別ではなく、誰が当事者で誰が支援者かが分からないような、ともに学び、楽しみ、活動することができる場があり、杉野さんはそれを歴史学になぞらえて「アジール(聖域、避難所)」と表現されました。

 こうした取り組みに杉野さんご夫妻が関わるようになった時期と同じくして、宇治市による「認知症の人にやさしいまち」宣言をはじめ、国レベルでも「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」が策定されるなど、認知症をめぐる動きが活性化するなか、文篤さんはより多くの人に認知症患者の現状や可能性を知ってもらおうと、当事者として病歴をオープンにし、「語り」を通して発信を行うことを決意されました。

 由美子さんからも「いまは一人でできないことを二人でして、二人でできないことでも力を貸してくれる仲間がいる」というメッセージがあり、認知症の人が普通に暮らせるまちづくりを、さまざまな人々の協力のもとでつくっていくことの意義を、約270人の来場者や学生とともに分かち合うことができました。

 イベント終了後は宇治市の担当者の方々や平岡学長もご参加いただき、本学を交えた今後の取り組みについて有意義な会合が開かれました。

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