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【実施報告】 2016/6/1 『セラピストのコミュニケーション能力を養うためのワークショップⅢ』

2016年6月1日(水)、本学の客員教授でもある劇作家・演出家の平田オリザ先生をお招きして、「セラピストのコミュニケーション能力を養うためのワークショップⅢ」を本学同唱館で開催いたしました。

本学臨床心理学研究科でカウンセリングを学ぶ大学院生を対象としたワークショップの様子を見学できるように客席を開放し、学内外から50名近い参加者がありました。ワークショップは非常にリズミカルなテンポで進んでいき、客席からも楽しめる内容となりました。

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 声を出す、人と触れあうといった身体を使ったワークからはじまり、今年は3回目ということで、参加者である大学院生は高度な内容にも挑戦しました。

背の順2列に並び、向かい合ったペア同士が手を組み、その組んだ道を1人が進んでいくという内容です。『風の谷のナウシカ』のように、空中を歩くような格好になります。これは学校のクラスなどで行うと非常に団結力がつき、全員が協力しなければやり遂げられないワークだそうです。このときにも、舞台の端から端まで渡り切ると、思わず拍手が沸き起こり、非常に和やかな空気に包まれました。

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さらに、「イメージを共有することの難しさ」を舞台づくりの観点から私たちの日常生活に即して解説いただき、他者とのコミュニケーションにおいてどういうコンテクスト(文脈)においてお互いがやりとりしているかを強く意識できるよう、寸劇を通してレクチャーをいただきました。


 たとえば列車の旅でたまたま相席になった見知らぬ他者に「旅行ですか?」と話しかけることのなかにも、個人的な要因から文化・社会的背景の違いに至るまでのさまざまなコンテクストが想定でき、「話す側が、どういう気持ちで話しかけるのか」という観点からさらに「どういうときに話しかけたくなるのか?」といった「補助線」を問うことで、「シンパシー(同情)からエンパシー(共感)へ」というコンテクスト理解の試みを示していただきました。

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 また心理臨床にも直結する話として医療現場におけるコミュニケーションの事例を取り上げました。「何を持って治したといえるのか」といったことをめぐるコンテクストは医師や看護師や患者の立場によってそれぞれ異なり、論理的であったりときに感情的であったり、それらをくみ取る能力を養うことが大切であると話されていました。とくに、子供など社会的弱者はコンテクストでしか語れないため、そこを理解する能力こそがこれからのリーダーシップにおいて必要なのではないか、とメッセージを残してくださいました。

客席からは、「ワークショップ全体が一つの舞台のようであった」「始まったときと終わったときの参加者の方の雰囲気がまったく違い、やわらかくなっていたことに驚いた」といった感想をいただきました。参加した学生は、自分自身の臨床現場や実習と照らし合わせながら、さまざまなことを考える機会となったようです。

ときに鋭く、ときにユーモアをまじえた約3時間のワークショップはこのほかにもいろいろな気づきや示唆を与えてくれる濃密な内容となりました。

  当日の動画はこちらから ⇒  京都文教 大学生用 【1】【2】  京都文教 短大生用 【1】【2】  京都文教 教職員用 【1】【2】