What’s New

What’s New

2023年度卒業式 学長式辞

 本日、京都文教大学・大学院を卒業・修了する学生の皆さん、ご卒業、本当におめでとうございます。そしてこの良き日を共にお迎えになるご家族・関係者の皆様にも、日頃からの本学の教育活動へのご理解・ご支援に御礼を申し上げますと共に、心よりお祝いを申し上げます。また浄土宗知恩院総本山執事榎本了示(えのもとりょうじ)上人をはじめ、ご来賓の皆様おかれましても、ご多忙中にも関わらずご参列頂き、共に祝って頂けますことに深く御礼を申し上げます。

 さて、卒業生、修了生の皆さん、今、どんな思いでここに座っていらっしゃいますか。本当に大変な学生生活でしたね。とくに学部生の皆さんにとっては、大学入学とほぼ同じ時期に緊急事態宣言が出されてしまい、入学式すら今日のような形では実施することができませんでした。そして、大学に来ることはもちろん、自由に外出することもできないという、本当に辛いスタートになってしまいました。でも、今の皆さんの晴れ晴れとした姿、ここから拝見していても胸がいっぱいになります。

 教職員の私たちも、これまでにない事態の中で、なんとか皆さんと一緒に学びを継続しようと必死に取り組みましたが、私たち自身にとっても「突然で」「初めての」慣れないことばかりで、学生の皆さんにご負担をかけたこともあったのではないかと思います。またご家族の皆さんも一緒に学生さんの学びを支えて頂きました.本当にありがとうございました。

 大学院生の皆さんも、コロナ禍で臨床の現場での活動が制約されてしまう時期がありました。そのために研究が進まず、修了までの時間がかかってしまった方もいらっしゃったのではないでしょうか。本当に皆さん、よく頑張ってここまで辿りつきましたね。

 今年度になって、やっと様々な制約がはずれ、まるで失われた時間を取り戻すように、積極的に活動している皆さんの笑顔が本当に印象的でした。ゼミの交流会や合宿、サークルやプロジェクト活動なども活発に実施され、人とのつながりや何気ないコミュニケーションが、いかに私たちの生活にエネルギーを与えてくれるものかを実感しましたね。

 しかしそれにしても、コロナのような事態は、私たちに、衝撃、悲しみ、簡単には言葉にすることができない様々な試練を与えます。今年の始まりも、能登での大地震でした。多くの命が失われ、今も多くの方々が大変お辛い状況にあります。災害、病い、大切な人との別れ等、なぜ自分がこんな目に遭わなくてはならないのか、できるなら起きて欲しくないようなことが、私たちの人生にはふりかかってきます。自分ではどうしようもできないことがたくさん起こります。そういうとき、私たちは、ついつい「何かのせい」「誰かのせい」と考えてしまいます。

 でも、きっとこのコロナの大変な時期をなんとか乗り超えてきた皆さんだからこそ、「何かのせい」や「誰かのせい」にして立ち止まっているだけでは何も変わらないし、自分自身の時間や人生がもったいない、どこかで切り替えて前に進まないとならない、ということを一番深く理解していらっしゃるのではないでしょうか。そして、正解のない混乱した世界の状況だからこそ、適切な情報や知識に基づいて、しっかり考え判断することの大切さも大学で学んだと思います。

 私が今日皆さんにお伝えしたいことは2つあります。その一つは、ぜひ、「誰かのせい」という言葉を、「誰かのために」「誰かのおかげで」という言葉に置き換えてみてほしいということです。もちろん、その誰かは「自分」であってもいいのです。誰かのせいで何かを諦めるしかないと思い込まないで、自分のために思いきって決断することがあってもいいし、誰かに「ありがとう」って言ってもらったり、少しでも「誰かの役に立つことができたかな」と思えたときに、自分に自信をもてたり、自分を認めることができるかもしれません。誰かのためだったら頑張れる人もいると思います。同時に、「誰かのおかげで」少しだけ前を向けたとき、自分が一人ではないと思えるし、ありがたく、謙虚な気持ちになれるのではないでしょうか。「誰かのせい」「なにかのせい」と責め続けることは、何の解決にもならないし、結局は自らを不幸にするように思います。

 「四弘誓願」京都文教大学の建学の理念です。言い換えれば「ともいき」。それは他者の幸せを自分の幸せとして喜ぶ。一人ひとりが認め合い、生かし合う。そんな姿勢で、互いの幸せを実現できる人になるために誠実に努力する、ということです。つまり、誰かのおかげを感じ、誰かのためにと考え、行動できる人でいてほしいということです。
 地域や社会と関わりながら学び活動する機会がたくさんある本学ですが、大学の中での学びに限らず、皆さんの在学中に、「誰かのために」「誰かのおかげで」と思えるような充実した学び、嬉しい出会いや経験が、あったことを心から願っています。

 ただ、残念ながら、納得のいく学生生活でなかった、という方もいるかもしれません。やっと慣れてきたらもう卒業、もっと時間がほしかったという声もきいています。真面目な人ほど、足らないところやダメなところを考えてしまうかもしれません。

 そこでもう一つお伝えしたいことは、「自分で自分を諦めないでください」ということです。少しずつでもいいから歩み続けて、「どうせ自分なんて」と思って投げ出さないでほしいのです。世の中が不安定で将来への不安が大きいかもしれないし、今の時点でつい人と比べて落ち込むかもしれないけれど、自分で自分の未来を閉ざさないでほしいのです。皆さんの未来には様々なことが待っています。失敗することが怖くて勇気が出なかったり、どうしたら上手くいくかばかりを考えて、損か得かと考えてしまったりするかもしれません。でも人生はそんな計算通りには行かないし、それでいいし、だからこそ面白いのです。できることをやりながら、少しずつ積み重なっていくと、気付けば何かにつながっていることもあります。皆さんより少しだけ長い時間を生きてきて、そんな風に感じています。
 だからどうぞ、しんどいときは誰かを頼り、助けてもらってくださいね。頼られた人も迷惑ではなくて、きっと嬉しいはず。だから遠慮しないでください。その「おかげ」をまた別の誰かに繋げていけばいいのです。そういう積み重ねが「ともいき社会の実現」です。
 どうか、かけがえのない存在であるあなた自身の命を、生かされている命を、そして周りの人たちの命を大切にして、チャレンジをおそれず、勇気と希望をもって歩んでいってほしい。そう願います。

 それぞれの専門性、人としての成長を携えて、どうぞ胸を張って社会に、そして次の学びのステージに歩みを進めてください。そして、しんどいとき、嬉しいとき、いつでも、連絡してくださいね。大学にも遊びにきてください。私たち、教職員は皆さんと出会えて本当に幸せでした。今後の皆さんのご健康とご多幸を心よりお祈りしています。

ご卒業、本当におめでとう!!

京都文教大学の教職員を代表して
京都文教大学
学長 森正美

このページの先頭へ